ベース転がし 第10回:KEN SMITH BSR6TN-CM(Black Tiger)

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初めてのKEN SMITH ベース。

KEN SMITHブランドは知っていたものの、どこか古くさい印象で自分の中ではダサい部類に。ところが印象とはいい加減なもので、ダサい系から一転、あこがれ対象No.1になった瞬間が訪れたのです。(Vintage Fenderは別格)

音について一般にケロケロサウンドと称されることもあり、ハイ上がりで軽い印象を持っていましたがそれも完全な思い違いでした。

きっかけは「KEN SMITHが多弦ベースのパイオニアである」ということを知ったこと。

自分のメイン楽器であるFodera Anthony Jackson Modelの発明者アンソニー・ジャクソン氏が最初に多弦ベースをオーダーしたのがKEN SMITH。最終的にはFoderaブランドで進化の過程を経て「コントラバス・ギター」として現在に至るのですが、その物語で俄然興味が高まり、某楽器在庫検索サイトでチェックを重ねる日々が始まったわけです。

そんなある日、発見したのがこの楽器。もちろん6弦仕様。KEN SMITHの6弦にしては格安プライス。(ネックにねじれ有りの記述)あいにく東京のショップですぐに行けるわけもなく、売れてしまわないかさらにチェックの毎日…。

そしてようやく東京出張の日がやってきた!いつもなら業務終了あとは帰るだけのところ、ドキドキとワクワクの入り混じった心持ちで夜のSHIBUYAに向かいます。

たどり着いたショップのドアを開けると、お目当ての楽器がまさに今、目の前にどっしりと鎮座しているではないですか!はやる気持ちを抑えながらスタッフさんに試奏のお願いをしてみる。

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KEN SMITHといえば、家具メーカーが仕入れにやって来るほどの豊富で良質な木材ストックで有名。選りすぐられた貴重な材で造られた楽器を手にした印象はとにかく美しい!の一言。Black Tigerという上位グレード呼称を与えられたウォールナットの色合いや木目の表情は眺めていて決して飽きることがない…。タイガーメイプルコアとウォールナットのシャープな濃淡コントラストはまさにKEN SMITHの象徴。(前はダサさの象徴だったはずなのに…笑)

そして肝心の出音は…意外にも例のケロケロ感はほとんど感じられず、芯のあるミッド、ふくよかながら程よく引き締まったロー、そしてこれはKEN SMITH特有?高音域の華やかな響き。

フィンガータッチも滑らか、弦間ピッチも愛器Foderaと同様のチョイ広め。全くと言って良いほど違和感を感じません。ショップのサイトにあった格安理由であるネックのねじれもほとんどわからないレベル!

この機会を逃すとこの値段では二度と手に入れられない…。試奏しながらも金策で頭はいっぱいいっぱい。アレ売るかあ…そう決めた瞬間「すみませーん、これくださーい」。

ハードケース(別途発送)があるのに頼み込んで付けてもらったギグバックを背負って東京から帰ったことは言うまでも無く…。典型的なサラリーマン「出張あるある」の巻でした。

(その後しばらくメインで使っていたわけですがどこか物足りなさを感じ、ある日手放してしまいました。図らずともかつてのメインFoderaのポテンシャルをあらためて再認識してしまった次第。)