Who are The Double Bogey


第2回 Sadowsky NYC Vintage

ベーシストなら誰しも一度は憧れるサドウスキーブランド。
マーカス・ミラー、ウィル・リーをはじめとする世界のベースヒーローが愛するサドウスキーベース。

実は以前ネットオークションで手に入れたものの、すぐに手放したという苦い思い出があります。
80年代後期の製作で200番台シリアルという、かなり初期のモデルだったのですが、思い描いたシャープでクリアなサウンドイメージとは異なり、パワーも今ひとつ不足気味だったことがその理由でした。
試奏することもなく情報と質疑応答だけで購入を決めてしまうネットオークションのリスクをあらためて思い知らされたわけですが、この楽器については短い間ながらもいろいろと学ぶところがあり、またいつかこの「ベース転がし」でご紹介しようと思います。

ロジャー・サドウスキー氏が興したサドウスキーブランドですが、もとはプロのスタジオミュージシャンを対象としたリペアやカスタマイジングから始まります。
そのころのプロデューサーやエンジニアたちはスタンダードであるフェンダータイプの楽器を持たないミュージシャンは信頼しないという風潮で、まだヴィンテージブームなどない時代、今よりも随分と入手しやすかったフェンダーの中古楽器をミュージシャンたちはやむなく購入し、NYの街を地下鉄で移動しながらレコーディングやセッションワークに勤しんでいました。
とはいえ、日々の多様なワークの中でフェンダーのもつトーンキャラクターだけでは仕事がこなせず、多くのミュージシャンたちが悩みを抱えていました。
彼はそんな悩みを解消すべく、ミュージシャンが持ち込んだ中古フェンダーにアクティブサーキットを組み込み、演奏性向上のための様々なリペアを施すことにより、多彩なトーンをつくることができ、ライヴにもレコーディングにも対応ができる極上楽器へと変貌させることに注力したのです。
彼の仕事ぶりはすぐにミュージシャンの間で話題になり、気がつくとその名前はアメリカ中に知れ渡っていたのです。
マーカス・ミラーの愛器である79年製フェンダージャズベースにモディファイを行ったのもそのような時期です。
それから数年経ち、量産品のカスタマイジングだけでは飽き足らなくなった彼はそれまでのスキルを活かして製作された新しいオリジナルモデルのヘッドにSadowsky NYCの文字を掲げたのです。

さて今回のメイン、この96年製NYC Vintage4。
ボディはアッシュ、指板はメイプル、ピックガードはブラックという定番の組み合わせです。
「ベース転がし」第1回でご紹介しましたSUGIにも共通することなのですが、とにかく軽い!4kgありません。ひょっとするとSUGIよりも軽いかも知れません。
十分にシーズニングされた最高の木素材を使用されていることがうかがい知れます。
ノイズレス設計やアクティブサーキットの採用などテクノロジー面で語られることが多いサドウスキーですが、実はアコースティッククオリティを最重視するサドウスキー氏のこだわりなのです。

肝心の音色ですが、ひと言で表現すると…
マーカス・ミラーの音がします(笑)
もちろんマーカスはフェンダーモディファイしかも多くの機材を通して加工されたサウンドなので決して同じ音であるはずはありませんが、方向性だけでいえばまさにドンズバ。
マーカスと言えばやはりスラップ(私はついチョッパーと言ってしまいますが)です。
私はこの楽器を持つと猿のようにいつまでもはじき続けてしまいます。

普通の楽器と違うところは、高いアコースティッククオリティをもつ楽器が出し得る芯のある低音がしっかりと出るところでしょう。
アクティブサーキットで電気的に増幅した低音は、バンド全体のサウンドの中では埋もれてしまいがちなのです。
もう一つは、私がサウンドについて一番こだわる、中音域のコシがしっかり出ていることです。
スラップに向いたこのタイプのベースはドンシャリサウンドといわれる高音域と低音域を適度にブーストしたトーンが定番ですが、ただブーストしただけでは意に反して軽いサウンドになってしまい、これもバンド全体の中では埋もれる場合が多いのです。
しっかりとした芯のある中音域があってこそ、パワフルで存在感あるベース表現が成されるというものです。

コントロールノブでアクティブサーキットからパッシウ゛への切り替えができるのですが、一度アクティブで鳴らすとパッシウ゛では物足りなく感じてしまいます。
そう考えると、サウンドの方向性は違いますが、第1回のSUGIはパッシウ゛でも非常に優れたバランスで、物足りないどころかパワーも十分、なんとも驚異的な楽器であるということを再認識させられました。

サドウスキーのつもりが最後はSUGIの話になってしまいました。

参考:Sadowsky Style(株式会社オカダインターナショナル)